言乃葉の笹ふね

笹舟を流すように 言の葉を流そう さらさら流れるよ天の河 ころころと ことたまの 玉手箱

傾国の美女 と 肉だんご

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わたしは  わたしが  だいすき

 
だから  みづくろいだって  
おこたらないの


やわらかいからだを  
ゆみのようにそらし  けづくろい
いつも  つやつや  ふわふわ 
とっても  いいきもち


たべたいものだって 
はっきりしているわ
これは  すき  
こっちは  もっとだいすき
でも  これは  きらい  
だから  たべないの


あなたのところにいるのは  
あなたが  すきだから


わたしのことが  だいすきな
あなたのことが  すきだから
 
だって  わたしは  わたしが  
だいすきだから
 
 
🌖
 
 
こんな傾国の美女を  すきになり
でも 買うといっても  
ねこのごはんくらい
 
わりとよく  食べるけれど
こんなひとみで 
見つめられながら
にゃあ  といわれると
はいはいと 
猫撫で声を  出すしかない
でも  ねだられるのは  それくらい 
 
天竺から取り寄せた
白檀の香木で 
御殿を立てる必要もなく


国の南の果てに  
幻の果実を取らせに
馬を走らせることもなく

 
だから  家が傾くこともなく

安心して  猫可愛がり

 

  
🌖
 


さて  少しおしゃれな
お蕎麦やさんに
ご飯をいただきに伺いました

 

付け出しは  
小松菜と油揚げの煮びたし
鴨の肉だんごが添えてあり
その 鴨の肉だんごは
人肌より少し暖かい

 

作り置きをせず  そのつど
出汁の中で湯がいた  出来立てのお団子を

入れてくださっているんだ
丁寧だなぁと
ちょっと感激していたら

 

お隣のテーブルの方は
お三人組の女性
ひとりの人が  一方的に
外国に行ったお話を ずっとして

声がどんどん  大きくなって

わたしにも  聞こえてきて

なんだか  少し  疲れる

 

あの国   かの都市   遠い街

ここにはいない  誰かのはなし

お向かいの方々は  ただ聞いて  

 

でも 「今」だけが  欠落して

 

目の前にこんなに美味しい
煮びたしに  天麩羅
お蕎麦に  胡麻プリン
一緒に過ごしていらっしゃる

相づちを打つだけの  この方たちと
共有できるであろう  
今  目の前のシアワセがあるのに

 


🌖

 


目を向けたいのは  いま と ここ
目の前のご飯を
美味しく作ってくれたひとに
ありがとう
お店を綺麗に  お掃除してくださる
おかみさんに ありがとう
今 一緒に時を過ごしてくれる
目の前のひとに ありがとう

わたしが  わたしに  ありがとう

 

さて わたしは わたしが
大好きかなぁと ふと思い
いやいや まだまだ
あの傾国の  大先生ほどでは

 

ただ  本当の意味での  傾国って
自分じゃない  外側の何かを
不自然にまでに  

偉い  とし過ぎることではないかしら

 

自分を  無力化することでは
ないかしら 

他人を  無力化することでは

ないかしら

目の前の今を  無力化することでは

ないかしら

 

なぜ洋服の青山
外人のモデルさんの男女が
あんなに嬉しそうに店内を覆うの?

 

なぜテレビでは
タメ口の異国風の女の子のご機嫌を
大の大人が みんなで伺うの?

 

ここは  日本なのに。

あなたは  あなたなのに。

 

 

🌖

 


さあ わたしは早く家に帰って
あの黒い艶やかな
毛並みを撫でて


鴨の肉は  ないけれど
鳥のももの  肉だんごを 作ろう
それから
旅行の 計画も立てて

薔薇と蓮の  アロマのローションで

身繕いもして


わたしがわたしを
だいすきであるために
わたしが わたしのために