ご近所のあの人の 美しき変身
今週のお題「紅葉」
春の頃 薄紅色に霞むような
満開の櫻もいいけれど
今の秋の頃の 紅葉は
何も 特別なところに行かずとも
ご近所の見慣れた街路樹も 街路樹なりに
黄金色や朱赤に 色づいて
見慣れた普通が お手頃に
突然トクベツになっているところが
かえって どきっ ちょっと うふふ
その様子は 例えば
今までノーメイクだった
楚々とした女性が
時を得て 唇に鮮やかな紅を引くような
はっとする 感じだったり
あるいは 乾いた市街地の黄昏時
ビルの谷間に 突然現れし
熟した果実が 滴るように
たわわに実った 夕日だったり
この 紅葉のくれないをもたらすものが
春夏秋と 日々受けた
太陽の光の蓄積と
冷えた温度がもたらすものならば
例えば 人間の 特に女性の経年の蓄積は
なんで 紅葉のように愛でられず
シミだったり シワだったりと嫌われて
それはあまり美しいものとは
みなされないのだろう
一方 今年の秋までのわたしの日々は
別に 取り立てて
凄いことがあったわけでも
目新しいことがあったわけでも
ないのだけれど
身の内に蓄積された 日々の記憶は
喜びも悲しみも
良い塩梅に 程よく染め上がり
わたしという 紅葉のくれないを
せめて 自分ぐらいは 誇らしく
あなたなりに わたしなりに
みんなみんな くれないに染まり
そうして 錦のように落葉し
余分な いらないものも
まことに 都合よく
綺麗さっぱり 大地に落ちて
巷は今 スリムビューティが
密かに 量産中だとか そんなウワサ