言乃葉の笹ふね

笹舟を流すように 言の葉を流そう さらさら流れるよ天の河 ころころと ことたまの 玉手箱

主語のない世界

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とある方の  机の上に

繊細な地模様のある草色の

和紙が表紙の  美しい和綴じ本の  

谷崎潤一郎訳  源氏物語

層をなして  置かれておりました


昭和の大戦前の  本というよりは  草子

硬い背表紙もなく  薄く柔らかな手触りは

着物の胸の打ち合わせの中にでも

そっと忍ばせていらしたのでしょうか

昭和の初めの頃の  わたしたちの先人は


いにしえの頃の物語には

主語が  ほとんど無いそうです

そして  韻を踏み  五七五があり

句読点なく  流れるように  滔々と


わたしたちの言の葉のはじまりは

このようだったのだ

なんとも  たおやかにして  典雅  

それに引き換え  

今のおのれの硬さと無粋さに

消え入るような  思ひでした


〜  言乃葉の笹ふね  第四十一葉  〜